東京高等裁判所 昭和37年(ネ)2422号 判決 1967年10月16日
控訴人 原宿梱包資材株式会社
被控訴人 国
訴訟代理人 鎌田泰輝 外二名
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実<省略>ならびに理由
よつて職権により判断するに、本件記録によると、『控訴人は原審(東京地方裁判所昭和三六年(ワ)第六七八二号事件)において、同事件被告東京都、同首都高速道路公団、同国を相手として借地権確認等請求事件の訴を提起し、同裁判所において、「印紙不足額貼用命令に従わないことを理由に」却下されるや、これを不服として、右原審被告三名を被控訴人として控訴し、当審において右東京都ならびに首都高速道路公団に対する各訴を相手方の同意を得て取下げたこと、控訴人は原審において東京都ならびに首都高速道路公団に対し、「控訴人が東京都港区芝海岸通三丁目七番地、同八番地、同一一番地にまたがる宅地合計一万〇八九五、四九五三平方米(三二九五坪八合九勺)につき建物所有を目的とする賃借権(以下単に借地権と称す)を有することを請求原因として、その確認ならびに該目的土地の引渡を求め、」予備的に、「その引渡のできないときは、これに代る損害賠償としてその借地権価額(右土地の時価は三、三平方米(一坪)当り一〇万円で、その借地価格はその七割相当額すなわち三、三平方米当り七万円を下らないことを主張して合計二億三〇七一万三〇〇〇円の支払を求め、「被控訴人(一審被告)国に対し昭和二〇年九月初旬前記宅地上に存在していた控訴人所有の建物が占領軍により接収せられ、滅失せしめられた旨主張して右建物及びその利用に関連する営業上の利益四五七五万一八六〇円のうち金三〇〇〇万円の損失補償金の支払を求めたこと、控訴人は本件不動産の借地権の訴額はその固定資産税の評価基準たる価格三、三平方米当り金六八〇〇円の二分の一であると主張し、原審において訴状に貼用している収入印紙額は金一八万四一五〇円であること、控訴審においては、東京都ならびに首都高速道路公団に対し、「原審同様借地権の確認ならびに該目的土地の引渡を求め、」予備的に、「その引渡のできないときは、これに代る損害賠償として右両名に対し連帯して金四五七万六三五九円の各支払を求め、」被控訴人国に対しては、原審と同様の理由により請求の趣旨記載の金二〇八七万円およびその遅延損害金の支払を求めていること、ならびに控訴人は当審において控訴状に金三一万二五二五円の収入印紙額を貼用していること』が認められる。
以上認定の事実によると、仮に控訴人の予備的請求の点をしばらくおくとしても、原審において控訴人主張の第一審被告東京都ならびに同首都高速道路公団に対する第一次の各請求にかかる借地権の価額の算定を控訴人主張のとおりとして、右被告両名に対する訴額は金一一二〇万六〇二六円であり、被控訴人に対する第一審における請求金三〇〇〇万円と合算するとその訴額は金四一二〇万六〇二六円となり、この収入印紙貼用額が少くとも金二〇万六三〇〇円である(以下計算はすべて四捨五入の方法による)こと計数上明らかであるところ、前記認定のとおり控訴人は右につき金一八万四一五〇円しか収入印紙を貼用していないのであるから、金二万二一五〇円の貼用すべき収入印紙額が不足しているわけで、控訴人主張のとおりの計算をしたとしても控訴人が原審において裁判所の収入印紙貼用命令に応じなかつたことは失当であつて、これを理由として原審が控訴人の請求を不適法として却下したのは正当である。
ところで、たとえ原審において貼用すべき収入印紙額に不足するところがあり、その印紙貼用命令に応じなかつたため、不適法として請求を却下されたとしても、控訴審においてその印紙不足額を追貼補正した場合には、右の欠缺は補正されると解されるので、進んで、控訴人が原審において貼用すべきであつた収入印紙額ならびにその後の収入印紙の追貼の有無につき判断する。
控訴人は原審において、第一審被告東京都ならびに同首都高速道路公団に対し、予備的に第一次請求たる借地権に代る損害金として金二億三〇七一万三〇〇〇円を請求しており、ほかに被控訴人国に対し損害金三〇〇〇万円を請求しているのであるから、第一審における右被告三名に対する本訴の訴額は少くとも右合計金二億六〇七一万三〇〇〇円であり、これに貼用すべき収入印紙額は民事訴訟用印紙法第二条により計算すると、少くとも金一三〇万四八五〇円である。
ところで、前記認定のとおり本件では被控訴人に対する以外の各請求は当審において取下げられたのであるが、主観的併合訴訟において、訴の一部(数人の第一審被告に対する請求)が取下げられた場合においては、右取下前の訴訟に貼用された収入印紙額を取下げられた訴訟の訴額と残存訴訟の訴額との比率により按分し、この方法により算出した残存訴訟の訴額の収入印紙額が、残存訴訟に貼用された収入和紙額であると解すべきであるから、控訴人が第一審において貼用した前記認定の収入印紙額金一八万四一五〇円を前記取下に係る東京都および首都高速道路公団に対する各請求の訴額二億三〇七一万三〇〇〇円と被控訴人に対する請求の訴額金三〇〇〇万円に按分すると、取下後の被控訴人に対する本訴に貼用された第一審における収入印紙額は金二万一一九〇円であること、また、被控訴人に対する第一審における本訴の訴額三〇〇〇万円に貼用すべき収入印紙額が同条により一五万一三〇〇円であることは計数上明らかであるから、控訴人は原審において貼用を要する収入印紙額一五万一三〇〇円から右貼用ずみの収入印紙額金二万一一九〇円を控除した収入印紙額金一三万〇一一〇円だけ原審において収入印紙貼用額が不足していると認められる。
そして、当審においては、第一審同様東京都ならびに首都高速道路公団に対する第一次の各請求にかかる借地権の価額の算定の点をしばらくおくとしても、控訴人は右両名に対し予備的に右に代る損害金四五七万六三五九円を請求しており、ほかに被控訴人国に対し損害金二〇八七万円を請求しているのであるから、当審における右三名に対する本訴の訴額は少くとも右合計金二五四四万六三五九円であり、これに貼用すべき収入印紙額は民事訴訟用印紙法第二条により計算すると、少くとも金一九万二七五〇円である。そこで、控訴人が当審で貼用している前記認定の収入印紙額金三一万二五二五円から当審において貼用を要する右収入印紙額金一九万二七五〇円を控除した収入印紙額金一一万九七七五円を、前記説示の見解に立つて、控訴人が取下げた第一審被告東京都および同首都高速道路公団に対する第一審における各請求の前記認定の訴額二億三〇七一万三〇〇〇円と被控訴人に対する請求の訴額金三〇〇〇万円に按分すると、取下後の被控訴人に対する本訴の追貼分として控訴審において貼用された収入印紙額は金一万五五七五円であること計数上明らかであるから、前示見解に従い前記本訴第一審の貼用収入印紙不足額金一三万〇一一〇円から右追貼印紙額金一万五五七五円を控除しても、控訴人が被控訴人に対する本訴請求につき、第一審において貼用を要する収入印紙額はなお金一一万四五三五円だけ不足していることが認められる。
よつて、貼用収入印紙額不足のため控訴人に対し貼用命令を発し、控訴人が右貼用をしないので、貼用印紙不足を理由として控訴人の被控訴人に対する本訴請求を却下した原判決は結局相当であるから、民事訴訟法第三八四条、第九五条、第八九条に従い主文のとおり判決した。
(裁判官 高井常太郎 満田文彦 弓削孟)